『キューポラのある街』

チャンネルNECOキューポラのある街』(1962年、監督:浦山桐郎
 鋳物工場の溶銑炉のことをキューポラという。舞台となった埼玉県川口市で幼少期は暮らしていたので、小学校の体育館でこの映画を見せられた覚えがある。もっとも、吉永小百合が荒川の土手を走っていたという記憶ぐらいしか残らなかったが。
 住んでいたアパートのすぐ隣が鋳物工場であった為、部屋の窓からドロドロに溶けた真っ赤な鋳鉄が見えた。鋳物のにおいの熱風が常に立ちこめていて、今思うと、いつ自分の家が火事になってもおかしくないような所に住んでいたのだった。直にその鋳物工場も高層マンションになり、同じクラスに転校してきたマンションの子供を、お金持ちそうだなあなどと、ぼんやり思ったりした。自分の家が貧乏でも不思議と卑屈にならず、猛烈に羨ましがったりしない鈍い子供だったのだろう。
 貧乏でもどこか呑気で希望が持てた頃の映画である。