『夜の流れ』

日本映画専門チャンネル『夜の流れ』(1960年、監督:成瀬巳喜男川島雄三


 3月から始まった「4ヶ月まるごと成瀬巳喜男劇場」も今月でラスト。63年の生涯に87本の劇場映画を撮ったという成瀬監督だが、内59作品を集中して放送。
『夜の流れ』は、川島雄三との共同監督であり、成瀬映画のしっとりまったりした落ち着きのある画面に、騒がしいような溌剌とした動きが加わっている。


 川島監督と聞けば、私にとってはまず犬であり、期待通り冒頭部分で黒い犬が通りすぎ、置屋の芸妓(花柳界の母娘の確執の話である)も犬を飼っている。この映画の犬の部分はおそらく川島監督の担当である。犬が映画の本筋とは無関係だったり、一瞬の風景だったりするからである。だが、このちょっとした登場のさせ方が可愛いらしく、犬好きにはたまらない。


 成瀬監督も犬や猫を登場させはするが、こうはゆかず、もっとストーリーに絡んできて、意味やたとえの度合いが強くなる。『驟雨』の犬や『めし』の猫などしかり。
 その登場のさせ方が悪いというわけではない。『驟雨』も『めし』もユーモアがあって好きな作品に入る。ただ、動物が登場すると妙に感情移入して、そこばかりが後に残ってしまうのである。