『秋日和』

BS2『秋日和』(1960年、監督:小津安二郎)
 未亡人の母と敵定期の娘の話が中心ではあるが、おじさん三人組のやんちゃぶりがいい。
 亡き親友の七回忌に集まった佐分利信中村伸郎、北竜二の中年(五十三、四歳)三人が、坊主のお経が長いだの、未亡人(原節子)はますます魅力が増しただの、美しい妻をもらうと夫は早死にするだのと、料理屋の仲居をからかいながらお喋りしている場面は見るたびに笑う。
 何と言っても仕事の話をしないのがいい。中村伸郎の意地悪なネズミのような悪ガキぶりが特にいい。小津監督の描く、生活にも気持ちにもゆとりのある楽しげなエリート中年男は、今や私のひとつの理想像となりつつある。