『みんなのいえ』

 日本映画専門チャンネルみんなのいえ』(2001年、監督・脚本:三谷幸喜


 すでに3、4回見ていて、その度に三谷作品では常連の役者たちがどこでどんな役で出てくるかとか、田中邦衛の大工仲間の老練な味わいを楽しんだりするのだが、今回は特に吉村実子(田中邦衛の妻)の控えめながらも深みのあるお母さんに惹かれた。性格も服装も実に地味で、ほとんど台詞もないが、「昔の男」をうまい具合に立て、物事をしかるべきところに落ち着けてきたのはこういうお母さんであったと、笑いながらしみじみしてしまった。


 吉村実子でつい思い出したのは、『あ・うん』(向田邦子原作・1980年NHKドラマ)で、そのときのフランキー堺の妻の役もとてもよかった。
 映画終了後、三谷幸喜がインタビューに答えていたが、『みんなのいえ』で描きたかったのは職人同士のたたかいであり、家の建て方に関する蘊蓄的な部分は嘘である。
「プロの男同士の話」この面白さこそが、三谷作品を愛するゆえんであるが、そのポイントの一つは彼らの私生活を極力描かない巧さだと思う。