「男はつらいよ」シリーズ

 家人が次から次へと「男はつらいよ」を借りてくる。BS2ではシリーズ全作放映中。衛星劇場でも毎月2作ずつの放映とあって、今月は寅さん三昧。
 少し前までは『寅』なんて、うだつの上がらないオヤジが家で寝っ転がりながら喜んで観る映画だとバカにしていたが、いやなんの、これが寅のお定まり名調子に乗せられて次から次へと観てしまう。40歳にして寅の面白さにはまりました。


 特に初期の作品はパワフルでハチャメチャで明るくて、寅の傍若無人ぶりが怖いくらいに発揮されていて痛快。
 第1作「男はつらいよ」(1969年)では、20年ぶりに再会した妹さくらのお見合い(重役の妻になるチャンス)を、得意のウンコおしっこ話でぶち壊す。
 第3作「フーテンの寅」(1970年)では、さくらの夫である穏和な博と、めずらしく取っ組み合いの喧嘩になる。寅は単に面白い変わり者の「おにいちゃん」ではなく、まっとうな生き方から外れた手に負えない人間でもあることが笑いながらしっかりとわかる。


 初めの頃の寅は、常識もへったくれもなく「結構毛だらけ猫灰だらけ」のやりたい放題、そのやり方もまるで子供で、いや子供になどできない奔放ぶりでだからこそ喜劇としての面白さに力がある。
 子供といえば、さくらと博のあいだに一人息子(初代・中村はやと)がいるが、このおとなしい手のかからなそう満男君は、いつも画面の隅で決してつまらなそうではなくひとり遊びをしている。とても秀逸なのは、子供をきちんと子供扱いして話に絡ませてこないところである。これも、初期の作品の方が面白い理由のひとつになっている。