『樋口一葉』

 ホームドラマチャンネル『樋口一葉』最終回。このごろ見た連続ドラマの中では、次回を楽しみにして待った予期せぬ逸品。


 一葉は最後まで、冷静に自分の作品を判じることができた。「たけくらべ」が鴎外・露伴・緑雨の三人で作っていた文芸評論誌で絶賛され、作家として確固たる地位を築き、それとともに突如として無批判に絶賛口調になる風評・論調に苛立っていた。
 そんな中、斉藤緑雨だけはきちんと自分の作品を批評してくれていると信頼をおいていた。一葉は最晩年、かなりうまが合ったというその緑雨と激しい議論を交わしたらしいが、作品を作品としてきちんと評してくれる人物が傍にいたことは幸せなことである。作家は代表作と言われるものを書いてしまった後、どれくらい冷静に自分の作品に向き合っていけるかが問題なのである。
 緑雨はひねくれ者といわれているが、一葉の死後も樋口家の面倒をみた人物であり、このドラマで急に興味がわいた。


 ふと思ったのだが、樋口一葉の物語を映画『曾根崎心中』のように文楽の人形で演じたらどうだろうか。一重瞼のつるりとした白い女形の顔は、「玉子みたいな顔」と言われた一葉にとても合っている。