『ムー』

TBSチャンネル『ムー』(1977年)。再放送されるとつい何度でも見てしまう番組のひとつ。
 毎回朝9時からの放映なので、『うさぎや』(足袋の老舗)のおちゃらかな日常(ドラマの一話分は、その日一日の出来事という構成)とともに、自分の今日一日もスタートする。


 『うさぎや』をめぐる人々は、誰も自分の内面などと向き合って難しく思い悩んだりしない。陰湿で不愉快なだけの人間関係に煩わされもしない。これといった事件が起こるわけでもないとりとめのない日々の出来事に、手抜きをせずあたり前に取り組んでいるだけである。だから見ていて気分がいい。
 特によかったのは、家族全員で海水浴に行くか行かないか、なんやかんやあたふたやっているだけの回。結局その日は雨で中止となるのだが、その予想のつくオチ具合にも腹は立たず爽快な気分になる。こういう何でもない楽しい話(ドラマ)は実に貴重である。


 毎回お待ちかねの歌のコーナー、郷ひろみ樹木希林の『お化けのロック』が始まると、この振り付けを覚えようと「イッヒイッヒヒ、イヒイヒ」と体が勝手に動き出し、こんな具合に唐突にドラマ内「歌謡コーナー」が始まっても、まったく不自然でなく楽しめたことに、良いドラマが作られているときの勢いを痛感するのである。