あこがれ

 日本映画専門チャンネルで『あこがれ』(1966年)。
監督:恩地日出夫、原作:木下恵介『記念樹』、脚本:山田太一


 山田太一の描く男性はリアリズム(父親世代の登場人物には時に身につまされる)で、女性は理想像・あこがれである。
 女だからそう思うのかも知れないが、どんなに非常識でわがままな女性が登場しても、そこに悪意は感じられず、嫌な印象が残らない。
 一方、男性の方は後々まで気持ちのどこかに引っかかっていて、事あるごとに思い出すようなキャラクターだ。


 この『あこがれ』でも、対照的な父親(小沢昭一加東大介)が共に味わい深く描き込まれている。
 やはりうまいなあと思って、同じく脚本を担当している『男たちの旅路』第3部を再び見る。はじめのうちは反りが合わなかった鶴田浩二と水谷豊の間に、徐々にしっかりと気持ちの繋がりが生じ、ユーモアまで漂っている。丹念にじっくりと細部を放り出さずに描く、山田太一ならではのドラマである。