肝っ玉かあさん
TBSチャンネル『ありがとう』(1973年)。
商店街が舞台のこの第3シリーズにも、バラエティに富んだ女達がたくさん登場する。八百屋の女主人、葦原邦子を見て妙に懐かしくなった。こういうどっしりとかまえた肝っ玉かあさんは、もうほとんど見られない。
『肝っ玉かあさん』(1968年〜)といえば京塚昌子だけれど、体格も性格もゆったりしていて、白い割烹着が似合って、声は高めだが大人の落ち着いた響きがあって、いつもにこやかだが芯は強い、そんな「かあさん」はテレビの中にも現実にも絶滅してしまったのではないか。
浅草あたりでも、エプロンや割烹着のおばさんはたまに見かけるが、肝っ玉かあさんの雰囲気とはどうも違うようである。
「実際よりも若く見える」ことを至上とする近頃のおかあさん達は、実にスタイルがよく、着ているものも十代二十代の娘と変わらない。
犬に気をとられて散歩をしているときなど、お姉さんらしき人が犬に何か言いたげに見ているなと思ってふと顔を上げると、眼前に若作りの山姥が迫っていて、ほんとうにびっくりするのである。