小林亜星

 地上波を見ていたら、坊主頭で袢天姿の寺内貫太郎(小林亜星)が出て来て、おやと思ったら墓石のCMだった。
 いま、地上波でも「レトロ」が蔓延しているので、昔のドラマを見ているとこういうクロスオーバーがよく起きる。


 『寺内貫太郎一家』での小林亜星は谷中の「寺内石材店」の主人で体重百一キロの巨体、「一家で一番えらいのはおとうさん」だった時代のワンマン主人である。
 演出の久世光彦によると、キャスティング当時、小林亜星は俳優としては素人で、長髪・金縁眼鏡・チェックの上着と、軟弱で好色なイメージがあって向田邦子が納得せず、万策尽きた後、このドラマのために坊主頭になってもらったそうである。
 だが今となっては、昭和30年代生まれの者にとって、小林亜星は「坊主頭に紺の袢天姿」の寺内貫太郎以外考えられないのである。