三好栄子

 三好栄子の顔が忘れられない。ちょっとしたシーンにしか登場しなくても、一回見たら脳裏に焼きつく名女優、いや三好栄子の場合は怪女優かもしれない。
 よく言えば日本人離れした顔立ち(フリーダ・カーロの描く極太眉のごついメキシコ人っぽい)、率直に言えば海底でじっと構えているカサゴっぽいその顔は、独特のたたずまいと相まって、異様なほどの存在感を持つ。


 
 わたしが三好栄子に最初にガツンとやられたのは、『お早よう』(小津安二郎監督)で、杉村春子の母親役の彼女を見たときだった。あの、包丁片手に、そして言葉巧みに、怖い押し売りを追い払うシーンは最高である。それ以来、何の気なしに見ている映画でも、三好栄子を見つけると嬉しくなる。
『大当り三色娘』(1957年、監督:杉江敏男)の中でも偶然見つけ、もうそれだけで作品のパワーが増すような楽しい気分になったのだった。