『ジョーズ』

 DVD『ジョーズ』(1975年、監督:スティーブン・スピルバーグ
 昔観たときの印象は、海水浴客がただサメに喰われるだけの怖い映画だった。だが今観ると、命がけでサメと格闘する、それぞれ立場の違う男3人のいい話である。
 などと気取ったことを言って、『ジョーズ』を更に楽しめたのは、三谷幸喜監督『みんなのいえ』のおかげである。
ジョーズの』の後半、サメ退治に海へ出る漁師、海洋学者、警察署長が、『みんなのいえ』では田中邦衛唐沢寿明田中直樹(ココリコ)に相当していることを、「24時間まるごと三谷幸喜」のインタビューで知り、さっそく『ジョーズ』を今一度観た次第なのである。
 その結果、オロオロとする警察署長が田中直樹に見えて仕方がなかった。船上で3人の男が傷自慢をする場面はすごく笑えた。そして『ジョーズ』『みんなのいえ』ともに、何度でも面白く観ることができた。オリジナルを凌駕せんとするこの惚れ込みようこそが、好きな作品の影響を受けて後から物を作る人の誠実さである。


 それにしても、ラストがすっきりしていてすごく良い。今だったら、サメ退治に成功した署長は、家族のもとに帰って抱擁……という具合になるだろう。
 男同士の話が好きな身としては、女の登場しない映画をもっと作ってほしい。三谷幸喜も『ジョーズ』同様大絶賛する『大脱走』(1963年、監督:ジョン・スタージェス)を観ながら、つくづくそう思った。