『ハロー!フィンガー5』

日本映画専門チャンネル『ハロー!フィンガー5』(1974年、監督:福原進)


 東宝チャンピオンまつりでアニメと同時放映された20分の短い作品。ヒット曲を中心に、ドキュメンタリータッチで5人兄弟の日常の姿も撮っている。
 小学校時代の私は、妙子ちゃんの大ファンだった。フィンガー5のレコードを発売と同時に買うのは当然、速攻で歌も踊りも完全マスターし、妙子ちゃんになりきった。あきら君のサングラスを買って友達にかけさせ、フィンガー5ごっこを飽きもせずやったものである。


 この頃は、好きな人の真似をしたり、同じ物を持ったりするのが何より楽しかった。『平凡』や『明星』に載っていた妙子ちゃんの愛用品を真剣に見入り、筆箱の中の鉛筆や消しゴムまでお揃いにして喜んでいた。
 今は幼児期ですら、個性とか想像力のあることが手放しでよしとされているようである。
 だが、誰かの真似をしたり、大きく影響を受けたりし、更にはそれを自覚してゆくことも大切である。
 自分にしかできないことやオリジナリティーを強調するのもいいが、猿まねでもパクリでもいいから、好きで好きで仕方がないものに一度すっかり自分を投入し、存分に楽しんだ後にこそ、想像性は芽生えてくるように思う。
 個性を出そうとか想像力を働かせようという意識を忘れ去った後、いやでも出てきてしまうものが良くも悪しくも自分らしさなのではないだろうか。