『シャツの店』

ホームドラマチャンネル『シャツの店』(1986年、脚本:山田太一、演出:深町幸男)が始まる。
 東京、佃でワイシャツ作り一筋の職人(鶴田浩二)が、妻(八千草薫)と大学生の息子(佐藤浩市)に突然家を出て行かれる。家族の気持ちを顧みない父親の頑固さに、妻と息子は耐えきれなくなったのである。


 のっけから山田太一らしいセリフの応酬で引きこまれる。長年夫に尽くしてきた妻の鬱積と、動揺しながらも面には出さない夫の意地が見事に描かれている。
 心の内をぶちまけても、けっして醜くくも幼稚っぽくもならないのが、山田ドラマの巧いところである。観念的な言葉に逃げたり頼ったりせず、どこまでも具体的に丁寧に気持ちを言葉にしているからこそ、ここまで会話で引きつけられるのだろう。