岸辺のアルバム

 TBSチャンネル『岸辺のアルバム』(1977年、脚本:山田太一)。


 洪水で家が流される映像にジャニス・イアンの曲(ウィル・ユー・ダンス)というミスマッチな感じのオープニングは、山田太一ドラマの真骨頂、ドラマが始まる前から引き込まれる。


 人物紹介をしなければならない第一回目でも、テンポよくちょっとした仕草や言葉で、一人一人の性格を的確に鮮明に描き出してゆく。
 心の中に眠っている感情を、執拗にほじくり出すことで展開するストーリーは、一見、生き甲斐を求めたり、自分とは何かを探す話に思える。だが、それは細部がきっちりリアリズムで固められているからそう見えるだけであって、話そのものは大人のメルヘンである。


 山田ドラマほど、主人公があけすけに内面を流暢に語り、その通りに行動に移し、なんだかんだ言いつつみんなやりたい放題で、結局ラストに至っても問題が解決しない話はない。解決するどころか、教訓めいたものもない。しかし、だからこそ、これほどまでに面白く、どんよりと精神の煮詰まった感じがなく、最後の最後で、それまでしっかりつかまれていた手を急に放されるような、私にとってはこの上ない爽快感が残るのである。