『岸辺のアルバム』

 TBSチャンネル岸辺のアルバム』最終回。


 大雨で堤防が決壊、岸辺の家が濁流に流されてゆく。
 父母娘息子の四人が家から持ち出せたものは、家族のアルバム数冊のみ。
 最後にみんなが「さようなら、さようなら」と傾きかけた家の中で、そのマイホーム(父が必死に働いた成果)に向かって別れを告げるシーンは、滑稽でありながら胸が痛くなるほどリアリティがある。


 濁流が去った後、壊れなかった屋根の部分を見つけ、家族四人その泥だらけの屋根に上がり、「また一から頑張ろう」と新たな出発を誓い合う。
 でもそこは山田太一の脚本であるから、爽やかなハッピーエンドとはいかない。
 それぞれに問題を抱えてきた家族である。ちょっとやそっとでは、いや家がすっかり川に流されて、もう一度家族の絆を確認しても、このあと幸せな人生を過ごせるかどうかはわからないのである。
 だが、このようにラストまできっちりと、ひとりひとりの人生というもに責任をもって描いたドラマだからこそ、幸不幸を越えた深い感動が後々まで残るのである。