「戦場は遙かになりて」

 日本映画専門チャンネル、『男たちの旅路スペシャル「戦場は遙かになりて」。


 これで全13話終了。最後のスペシャル版は、やや取って付けたような印象が否めない。山田太一としては、もう済んでしまった仕事、という感じがする。彼にしては珍しく無理に問題を解決(ハッピーエンド)しようとしているし、約2時間と長いこともあり、話をドラマティックに仕立てようとしすぎている。
 凡百のドラマならこれで十分だが、山田太一のものとしては物足りない。やはり山田太一は、日常の何でもないことをチマチマと、執拗にこだわって描き出してゆく作品の方が画面に得体の知れぬ力が宿っている。


 このすぐ後に、『男性NO.1』(1955年、監督:山本嘉次郎)の鶴田浩二を見た。『男たちの旅路』のおよそ25年前である。若い頃は、随分と甘いマスクの優男であるが、声と口調は変わらぬ鶴田浩二そのもの。人はなぜ、風体ほどに声は年をとらぬのか。