新日本紀行

NHKビデオ『新日本紀行 第7巻・浅草』。
1968年冬の風景。酉の市で賑わう鷲神社、隅田川、雷門、浅草寺、早朝の勤行、今はなきハト豆小屋に本堂裏の展望タワー、仲見世、六区……と、ほとんどいつもの散歩コースばかり出てくるので、瞬きするのも惜しいくらい堪能する。


 奇をてらった映像はなく、ナレーションもわかりやすく控えめ。新しさだけのいい加減な感性や雰囲気に任せたものよりも、はるかに面白く何回でも見たくなる。
 特に、江戸玩具(掌にのるほど小さく精巧な伝統玩具)の老職人の言葉にしみじみとする。
 終戦後5、6年はまったく売れず、何度も転業を考えたという。その間、どのようにして食べてきたのか気にはなるが、「衣食住でいっぱいのときに、こんなもん、見向きもする人ないですよ……これをほったらかしとくとね、江戸以来長い間かかってできた江戸のおもちゃがなくなってしまうんですよ、戻ってきませんから……お金目当てじゃできませんよ。好きだし、惜しいと思ったからですね……」
 「ほったらかしとく」、その言い方が実に昔の江戸弁という感じでよい響きだった。